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軍事・テロ



中東イスラム世界 社会統合研究会 軍事・テロ

テロ情報の自動収集システム

平成30年(2018) 5月11日
村瀬一志







事前に設定したキーワードが出現したページを自動収集している。 収集した情報は、キーワードを指定して取り出せる。




自動収集した情報のリスト。クリックすると取得した魚拓が表示される。




 テロの予知はできないものだろうか? 手っ取り早いのはネットに書かれる犯行予告をいち早く探すことだ。この着想が一般的になったきっかけとなったのは平成20年(2008年)6月8日の秋葉原通り魔事件とされている。犯人は掲示版に「車でつっこんで、車が使えなくなったらナイフを使います みんなさようなら」という犯行予告を書いて犯行に及んだのに事前に何も備えることができなかったからだ。(この事件がいわゆるテロかどうかはいったん置くとして、物理的に行ったことはいわゆるテロと同じだ。)


 また、テロが発生した地域、時期、などを調べ、統計、トレンド、確率、といったものへ数値化してゆけば、次のテロの予測も時期と前提を明示した上で言えるようにも思う。(逆に時期と数値を定めなければなんでも予測できるし必ず当たる。例えば、将来必ず円安になる、など。)


 そこで考えたのが、ネット上に現れるテロ関係のキーワードを自動的に検知し、そのページをかたっぱしから取得し保存してしまおうということだ。データを取り込む手間はないし取りこぼしもないし、取り込んでしまえば消される心配もなくなり、あとで統計処理などもできる。そしてテロ情報自動収集システムを実際に作ってみた。画面のキャプチャを左に表示する。


 Terrorism, Jihad など(具体的には左上の画面キャプチャをご参照下さい)、テロに関連したワードやフレーズがネット上に出現したらそのページを訪れて保存するというものだ。保存とは所謂「魚拓」を取っている。 やってみると自動取得をブロックしているサイトがちらほらあるものの、ほったらかしで情報がどんどん自動的に集まるのは非常に便利だ。また、マシンのトラブルや情報がネット上から消されることに備えて二台のマシンで運用しているが、集まる情報が二台で異なる。これは予想していたことではあるが予想通り過ぎてどう対応するか思案中だ。


 さてこうして荒削りではあるが自動的に収集されるテロ関連データを眺めているだけでも、いつのまにか勘が発達してきたりするから面白い。例えば事故の現場写真を見た瞬間に「手口が明らかに違うから、○○から出された犯行声明は便乗か嘘だな」とか「あ、これは芝居くさいなー」、「この担架で運ばれてる被害者、運んでる人たちのうちの一人がカメラマンの前で被害者に扮し、こんな風に助けておるよと見せて撮らせたんだ」、「このど派手な砲撃、カメラマンの前で『いっちょ撃ってやるから撮りな!』と言って撮ったような気がする」などである。


 そうした勘が働くようになると(論理的におかしいことには知識なしでも気づくはずだが)テロ、特に日本人がからむテロ事件が起こるとメディアに登場するそれらしい解説に対して変だなぁと思うことも少なくなくなる。例えば現地時間で2016年7月1日に発生したイスラム教徒の若者たちによるダッカ・レストラン襲撃人質テロ事件について。よくある解説は次のようなものだ。


  1. 安倍晋三総理がイスラム国への対応を誤ったため日本人が狙らわれた。
  2. 貧困などなんらかの不満を持つ若者がテロに走った。
  3. イスラム国による対十字軍行動への呼びかけに世界のイスラム教徒が呼応し始めた。
などだ。


 まず項番1について。確かにアメリカ人などは犠牲になってはいない。しかしイタリア人が犠牲になった理由は全く説明されていない。それにそういった政治的な目的ならばレストランの客を人質にとってなんらかの政治声明や要求をするものであるはずなのにそれがない。犯行後の犯人らはレストランに立てこもって人質と引き換えに何かを要求するわけでもなく、飲食するなどして店にとどまっていた。そんなことをすれば逮捕は確実どころか武装しているのだから現地警察に射殺される可能性も高いのに。後で集めた報道によれば彼らは自分たちが死ぬこと自体を目的としていたようだ。よく死んで素晴らしい死後の世界に行くためのチケットとして、テロを起こしたわけだ。安倍総理もイスラム国も関係がない。
 また、事件直後、私はその時手に入るニュースを全て集めた上で、知人でバングラデシュに何度もビジネスで行かれている方に現地のようすを尋ねてみた。するとアメリカ人やドイツ人は高い塀に囲まれ警備も厳重な「アメリカンクラブ」や「ジャーマンクラブ」で普段飲み食いしているので襲撃にあったような店にはおらず、そういう現地人を隔離したクラブを持つ発想のない日本人やイタリア人は現地のレストランを使っているから結果的に犠牲になってしまったんだと思うよ、とのこと。こちらの方がよほど説得力があると思うがどうだろうか。(ちなみに日本にもアメリカンクラブはある。)
 さらにイスラム地域で長くビジネスをされてこられた方にも意見を聞いてみたことがある。すると、そもそも飲酒禁止の国なのだから、外から見える店で、酒を日常的に呑んでいて、日常的に反感を買っていた可能性がある、とのことだ。現地人が経営する店なのに酷いなとも思うが確かにありそうな話だ。日本人は呑気にこの店は飲酒はOKだからと油断し、結果的に飲酒の風景を見せびらかすようなことになっていたのかもしれない。ちなみにイスラム圏の国でも現地人はけっこう酒を飲んでいたりする。私も中東のいくつかの国で数回付き合ったことがある。しかし全部「隠れて」呑んでいたことを思い出す。


 項番2について。これもよくあるパターンだが根本的に違うし論理的にハチャメチャ。たいてい最初に現地の政治情勢を解説したあと、「そんな中、貧困などなんらかの不満を持つ若者がテロに走ったと思われます」と結論付ける。しかし長々と語られた現地の政治情勢と犯人の行動との因果関係が一切説明されておらず、テロの専門家でなくともおかしな議論だと気づくレベルだ。現地の気候と風土を説明し、そんな中、若者がテロを起こしました、というのと話の展開は同じ。因果、相関、トレンド、統計、確率、何一つ語られていない。もう一つ重大なミスは、現代のテロは金も教育もある者がやるというのが定説になっているし、そしてここで取り上げているダッカの件も金と教育がある者たちによる犯行なのに、テロの解説者はそういうテロ関連の報道も見ていないということである。


 項番3について。確かにイスラム国の公式マガジン「ダビク」などを読むとイスラム国は世界のムスリム(イスラム教徒のこと)たちへ向けて呼びかけたりはしているが、であればなおさら犯行のさいそういった声明を出すべきではないか? そして我々に続け、とも言うべきではないか? 結局のところ、生とは死への準備期間にしか過ぎない、という彼らの理屈を徹底しただけに過ぎないように思える。


 さてこの自動収集はWEB全般に対してやっているが、ツイッターなどの投稿を監視してテロ予告などを検知することも可能だ。そしてやってみた。すると「飯テロ」とか推理小説、マンガなどの情報が大量に収集されてしまい、これはなんからのクレンジングが必要だということも、予測はしていたがよくわかった。また、ツイッターはスマホで投稿した場合、スマホ搭載のGPSにより緯度経度の情報がわかる場合がある。これを使ってツイートの内容と矛盾がないか検証したりすることもできる。例えばシリアで犯行予告をしているかのように書いているのに緯度経度がアメリカだったら完全に嘘ということになる。


 さらに、本稿ではテロ関連を取り上げているが、例えば特定の企業名や製品、ブランド名をキーワードに自動収集することもできる。企業が自社ブランドとともにライバルブランドの情報、評判、口コミを自動的に集めるという使い方もあると思う。


(以上)




















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