トップ

成果物

中東イスラム世界への扉



中東イスラム世界 社会統合研究会 中東イスラム世界への扉

トルコスポーツ事情

2019年8月
新井 春美



 2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会まで1年を切った。大会では、普段目にする機会の少ない競技を観戦することはもちろん、出場している他の国や地域に思いをはせることもまた、面白さの一つであろう。
 そこで、今回はトルコのスポーツ事情を取り上げてみたい。なお、トルコのイスタンブールは、2020年大会の開催を巡り東京と争った都市である。イスタンブール・ユーラアシアマラソンは、ボスポラス海峡をまたいでアジアとヨーロッパをつなぐ橋がコースに含まれており、2大陸を駆けるマラソン大会として有名である。
イスタンブール・ユーラシアマラソン

長友選手も在籍するスュペル・リグ

スュペル・リグで優勝したガラタサライ
長友佑都選手は前から2列目、左から5人目
Anadolu Ajansı(電子版) 2019.8.8
 トルコの人気スポーツといえば、断然サッカーである。試合の結果はもちろん、監督や選手の動向などサッカー関連のニュースは常に大きく取り上げられている。スュペル・リグ(Süper Lig)には18のチームが参加しているが、強豪ガラタサライに長友佑都選手が在籍、ベシクタシュには香川真司選手が在籍していた。そして多くのトルコ人選手が、ヨーロッパはじめ世界各地のクラブチームで活躍している。
 バレーボールやバスケットボールも人気があり、男女ともにプロのリーグがある。バレーボールでは、現役時代の木村沙織選手が所属していたこともあるワクフバンクが、2018年世界クラブ
女子選手権で優勝している(3位もトルコのチーム)。
 バスケットボールも海外でプレーする選手も少なくない。エネス・カンテル選手はジュニア時代から頭角を現し、2011年にはNBAドラフト全体3位指名を受け、現在はボストン・セルティクスに所属している。
 ウェイトリフティングではオリンピック3連覇を果たし、「ポケットヘラクレス」というあだ名で親しまれたナイム・スレイマンオール(1967〜2017)が有名で、彼の半生を描いた映画がこの秋、トルコ国内で公開の予定である。
 伝統競技としてオイルレスリングが盛んであり、オリンピック・パラリンピックでもレスリングでは数多くのメダルを獲得している。
 最近では、水泳、アーチェリー、柔道、テコンドーなどの世界大会における好成績も頻繁に報道されている。

実績を上げるパラスポーツ

アリ・トパロール選手(中央)
TRT日本語(電子版)2019.7.28
 障害者(パラ)スポーツでのトルコ選手の活躍も目を引く。直近の一例を挙げれば、フィンランドで開催されたヨーロッパ・ダウン症選手権(2019年7月)で、トルコは金メダル5個、銀メダル6個、銅メダル8個を獲得した1。これは出場国11カ国中5位であるが、砲丸投げで、アリ・トパロール選手が10.96mという世界記録で金メダルを獲得したことは快挙と言えよう。
 世界レベルの選手と言えば、ミライ・ウラシュ選手の名前をあげることができる。パラ水泳選手として、4年間に30個以上のメダルを獲得し圧倒的な強さを誇るだけでなく、セイリング・ヨーロッパ選手権でも4位に入賞するなど活躍の場を広げている。ウラシュ選手は、パラ水泳で東京大会に出場し良い成績を収めることが目標だと述べている2
 こうした実績のある選手に加えて、有望なジュニア選手も登場している。スイスで開催されたパラ陸上競技ジュニア選手権大会(2019年8月)では、ハウワ・エルマル選手が女子800mと1500mで金メダルを獲得した。
 なにより顕著なのが、パラリンピックでの成績向上である。2008年北京大会での獲得メダル数は2個だったのが、2012年ロンドン大会と2016年のリオ大会ではそれぞれ10個と大幅に増加している3
ミライ・ウラシュ選手
Milliyet (電子版)2016.8.12

長期ビジョンに基づいたパラスポーツ政策

 トルコのパラスポーツの躍進には、国の政策も大いに関係していると考えられる。スポーツを管轄する「青年とスポーツ省」が作成した報告書において、スポーツは障害者の社会参加や人生の質の向上を実現するために有効な手段の一つと位置付けられている。そしてスポーツ施設を障害者に適した状態にすること、障害者のスポーツパフォーマンスを向上させること、教育機関において障害者のための活動を行うこと、スポーツを通じた障害者のリハビリテーションを実施すること、を大きな目標としている。これらを実現するために、青年とスポーツ省、保健省、教育省などの国家機関に加えて、地方自治体、大学、スポーツ連盟、NGOといった幅広い分野の関係機関が連携することが謳われている4
 このように、スポーツをすべての障害者にとって有益なものとし、同時に社会全体でサポートしていこうという基本方針があるようだ。試合で良い結果を出せばよい、有力な選手だけを育成すればよいといったような、近視眼的な考えに基づくものではない。
 東京大会では、多くのトルコ選手の活躍を見たいものである。



1
https://www.tampere2019.fi/en/tampere2019-en/10-uutinen/7343-final-medal-table-of-the-european-championships

2
http://ladyradio.web.tr/tr/news/gh

3
https://www.paralympic.org/turkey

4
ULUSAL GENÇLİK VE SPOR POLİTİKASI BELGESİ
http://www.gsb.gov.tr/public/edit/files/Mevzuat/ulusal_genclik_ve_spor_politikasi.pdf 





















お問い合わせ   (C)中東イスラム世界 社会統合研究会