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トルコ政府はウクライナ情勢を受け、黒海沿岸諸国および非沿岸諸国の軍艦のトルコ海峡の通航を禁止すると発表した(3月1日)。トルコが交戦国ではなく、戦争の危機が目前に迫っているとはいえない状況で海峡の通航を禁止することについては疑問の声もある。しかしさらなる緊張の高まりや偶発的な衝突を回避するためには有効な措置である。 ロシア、ウクライナ両国と関係を維持してきたことからi、両国の衝突はトルコを難しい立場へと追いやっているが、すべての国の海峡通航を禁止したことでトルコは両国への配慮を示したといえよう。 トルコのエルドアン大統領はロシアのウクライナ進攻に対しては激しく批判をしつつ、プーチン大統領と数回にわたる電話会談を行っている。同時にロシアとの対話の努力を怠ってきたとして西側諸国の責任も問うている。トルコ国内ではロシアによるアックユ原子力発電所の建設が進み、トルコはNATOを怒らせてまでロシアからミサイル防衛システムS-400を導入した。シリアでは、ロシアはアサド政権を支援しトルコはアサド政権の打倒を狙ってきたが、イランを含めた3か国がシリア会合をリードしてきたように、両国は多方面において協力関係にある。 トルコとウクライナの関係も近年、急速に緊密化してきた。ウクライナにはおよそ600社のトルコ企業が進出し、トルコの対ウクライナ投資は324百万ドルとなり大切な経済的パートナー国の1つとなっているii。2019年以降トルコ製ドローンはウクライナに相当数、輸出されるようになったiii。エルドアンは2月3日にキエフを訪問し、ゼレンスキー大統領と会談してロシアとの仲介役を申し出たのに加え、自由貿易協定にも調印するなどさらなる関係の進展が見込まれる。 トルコのチャブシオール外相は10日にトルコ国内のアンタルヤでロシア、ウクライナ両外相を迎えて3者会談を行うと表明しており、両外相の初の直接会談として期待が集まる。果たしてトルコは「平和の架け橋」となり、何らかの成果を引き出すことができるのか。トルコにとっても正念場である。
i 2021年はロシアから約470万人、ウクライナから約210万人がトルコを訪れている。今回の衝突はトルコの観光部門に大きな打撃となると見られる。 (以上)
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